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中国経済成長率低下についての日中韓の視点

2015年3月7日(土)14時現在の各紙サイトより

国内主要紙一面トップ記事、及び社説・主張

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【朝日新聞】
「朝刊一面トップ」
『介護保険料6000円超、3割 指定市など 65歳以上の月額』
「社説」
『イスラエル首相 危うい挑発的外交』
『市長無罪判決 捜査の過程を検証せよ』

【産経新聞】
「朝刊一面トップ」
『眼前で母親火だるま...空腹でセミ食べ、地下道に 「戦災に遭うため生まれたのか」』
「主張」
『制服組と背広組 自衛隊の力生かす運用を』
『18歳選挙権 教室を政治の場にするな』

【東京新聞】
「朝刊一面トップ」
『集団的自衛権行使 公明、歯止め明記求める 安保法制 自民と隔たり』
「社説」
『集団的自衛 権行使の是非を問いたい』
『原発安全協定 本当に前進したのか』

【日経新聞】
「朝刊一面トップ」
『マイナンバー、企業手探り 対応着手に遅れ』
「社説」
『将来を見据えた着実な年金抑制が必要だ』
『外出先での地震対策は万全か』

【毎日新聞】
「朝刊一面トップ」
『集団的自衛権 「新事態」定義焦点 公明「もっと説明を」』
「社説」
『集団的自衛権 事態がどんどん増える』
『中国全人代 軍事より民生が重要だ』

【読売新聞】
「朝刊一面トップ」
『安保協議 恒久法「後方支援」に限定 公明、法案作成容認へ』
「社説」
『「存立危機事態」 柔軟対処へ政府に裁量権残せ』
『福島原発廃炉 リスク低減を着実に進めたい』


きょうの注目記事

中国の経済率低下について、昨日、一昨日と、日中韓各メディアにて主張を
掲載しています。
日経、人民日報、中央日報各紙から見てみます。


【「日経新聞」『成長目標を引き下げた中国のジレンマ』

『中国で全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕し、李克強首相は
今年の実質経済成長率の目標を前年より0.5ポイント低い7%前後にすると
表明した。』

『これは昨年の実績である7.4%よりも低い。景気の下振れ圧力は高まって
いるとみられ、現実的な目標を掲げたと評価できる。』

『2008年のリーマン・ショックのあと、共産党政権は強力な景気対策に踏み
切った。結果として、投機的な不動産取引の拡大や金融システム不安の広がり、
地方政府の債務の膨張、設備過剰、格差の拡大、環境汚染の悪化など、さま
ざまな副作用が生じた。』

『李首相が「短期的で強い景気刺激策はとらない」姿勢を保っているのは、
過去の反省を踏まえるなら当然といえよう。雇用情勢はわりあい良好なので、
やみくもな景気対策は賃金インフレを引き起こすおそれもあるとみられる。』

『ただ、緩やかな減速が景気の軟着陸につながるのか、いささか不安はある。
成長率の低下は金融システムに潜むリスクと地方政府の債務問題を顕在化させ、
景気の腰折れを招きかねない。』

『中央銀行にあたる人民銀行が今月はじめ政策金利を引き下げたのも、そんな
心配からだろう。一方で、投機的な不動産取引が再燃すれば問題はかえって
深刻になる。このジレンマに対する取り組みは万全とは言いがたい。』

『共産党政権の政策の重心をうかがう意味で注目したいのは、李首相が中長期的
な成長のエンジンとして技術革新の重要性を繰り返し強調したことだ。不十分
と批判されてきた知的財産の保護の強化を期待したいところだ。』

『格差問題や環境問題、民族問題など中国社会の安定を揺るがしている深刻な
課題への取り組みが具体策に乏しいことも、心配だ。』

『伝統的にイスラム教徒が多く暮らす新疆ウイグル自治区では流血事件が後を
絶たない。共産党政権は力ずくで抑えつける姿勢に傾いているようにみえる。
それで本当の安定につながるだろうか。』


【「人民日報」『中国は経済成長を確信 短期的GDP変動に懸念ない』

『中国の国内総生産(GDP)の増加率がここ数年に鈍化していることが世界の
注目を集めている。』

『国家統計局が2月末に発表した2014年のデータコミュニケによると、昨年の
中国のGDP増加率は7.4%で、24年ぶりの低い数字となったが、年初に設定
された目標値の「約7.5%」は基本的に達成できた。』

『慣例によれば、両会(全国人民代表大会と全国政協会議)における政府活動
報告で、李克強総理が今年の経済成長の目標を提起することになっている。
アナリストは、「北京(中央政府)は短期的なGDP増加率の変動については
懸念しておらず、未来の経済成長を確信している」と指摘する。』

『同アナリストは、「投資が鈍化し輸出が低下している状況の中、経済成長で
消費が重要な役割を演じることになる。一例を挙げると、中国の昨年の『ダブル
11』(11月11日)、すなわち大手ネット通販業者がうち出して定着したショ
ッピングイベントの期間に、一日あたりの取引額は350億元(1元は約19.1円)
に達した。最新のデータによると、2014年は最終的な消費支出の対GDP貢献度
が初めて50%を上回って51.2%に達し、前年比3.0ポイント上昇した」と話す。』

『「ダブル11」の取引額には中国の消費がもつ巨大な潜在力がある程度反映
されている。GDPに占める内需の割合を高め、投資や輸出への依存度を引き
下げることを方向性として、中央政府はこれまでずっと努力を続けてきた。』

『市場には、不動産などの産業は温度が低下しているが、力強い雇用に助けら
れて、経済の安定装置としての消費の役割が徐々に顕在化しているとの見方が
広がる。』

『ネット通販の活発さが関連サービスの発展を促している。中国の東部・浙江省
にある青岩劉村はごく普通の村だが、有名な「ネット店舗のトップ村」でも
ある。ここには全国各地から1万5千人を超える若者が集まり、ネット店舗
約2800社と宅配便会社約30社が設立された。』

『青岩劉村の現状は中国経済のモデル転換の中の新たな活力を代表するものだ。
中国の最高指導者・習近平総書記は、経済が中くらいのペースの成長段階に
入ったことを、経済発展の「新常態」(ニューノーマル)と呼び、中国の発展
は引き続き重要な戦略的チャンスの時期を迎えているという。』

『素晴らしい数字よりも、中央政府は新常態の下で経済運営の質により重きを
置いており、構造の最適化・バージョンアップや国民生活の実質的な改善に
より関心を抱いている。』

『統計コミュニケによれば、GDPに占める工業の割合は低下した一方、サービス
業の占める割合が上昇を続けており、14年は48.2%に達した。』

『これと同時に、ジニ係数は低下を続け、ハイテク技術産業と設備製造業の
増加率はいずれも2けたに達し、工業全体の平均増加率を上回った。こうした
ことから中国の経済構造には良好な調整が行われつつあることがわかる。』

『経済の成長率は低下したが、雇用は低下するどころか上昇している。統計
年報によると、14年の都市部の新規雇用数は1322万人に上った。また都市部
住民の所得が増加を続けており、14年の国民一人あたりの平均可処分所得は
前年比10.1%増加した。物価は2.0%の上昇で、物価上昇要因を考慮した所得
の実質増加率は8.0%に達し、GDP増加率を上回った。』

『中央政府は15年を、改革を全面的に深化させる重要な年と位置づける。
ウォッチャーによると、中央政府が経済分野でスタートした、または今後展開
する予定の一連の改革が市場の活力を発揮させ、中国の発展は新たなチャンス
を迎えることになるという。』

『同局の馬建堂局長は統計年報の発表会で、「中国は経済発展の新常態に主体的
に適応し、経済運営を合理的な範囲で維持している。経済は大きな下方圧力に
直面しているが、全体としてリスクはコントロール可能だ」と述べた。』

『政策決定層に近い経済学専門家は、「世界各国と比べれば、GDP増加率が7%
にとどまったとしても、世界の中ではトップレベルの増加率だ。雇用が十分に
あり、物価が安定し、所得がGDPと同じ歩調で増加しさえすれば、経済成長率
が少しくらい高くても低くても、すべて受け入れることが可能だ」と述べた。』


【「中央日報」『中国の成長率急落の可能性、韓国は備えているか』

『中国政府が今年の経済成長率の目標値を7%と提示した。24年ぶりの最低値
だった昨年(7.4%)よりも低い。中国の高成長時代が終わったことを改めて
確認することになる。』

『中国の成長率は2007年までは10%を超えていたが、その後2010年
(10.4%)をのぞけば下落傾向が続いている。昨年の成長率も目標値
(7.5%)に及ばなかった。』

『習近平国家主席や李克強首相ら指導部は、かつてのような高成長はもはや
可能でないだけでなく、この程度の中速成長だけでも充分だということを熱心
に強調する。』

『もちろん外部の視線は全く違う。成長率の低下が深刻だということだ。中国
の中央銀行である人民銀行が昨年11月に続き先月28日に基準金利を追加で
引き下げたのもその傍証だという指摘だ。近い将来、追加の金利引き下げが
あるだろうという観測も出てくる。』

『中国経済の長期展望もやはり悲観的だ。米国の民間経済分析機関であるカン
ファレンスボードは、中国の成長率が2014~2018年には平均5.5%、
2019~2025年には平均3.7%に転落するだろうという展望まで出して
いる。低賃金・海外依存の技術・集約的な投資を通した先進国追跡戦略が限界
にきたということだ。』

『さらに中国は依然として停滞している不動産市場、不足した雇用、物価上昇率
の鈍化といった懸案のほかにも地方政府の財政改革、国営企業の民営化など
緊急な構造改革の課題が山積している。中国経済が岐路に立っているという
兆候が明らかだ。』

『問題は韓国の対応だ。ここのところ対中輸出は昨年0.4%減少したのに
続き、今年に入ってからも2月までかろうじて0.5%増に終わるなど打撃を
受けている。』

『現地に進出した韓国企業も急騰する賃金にますます苦戦している。中国労働者
の平均賃金は1985~2012年の間に25.8倍も上がった。最低賃金は
毎年10%以上も上がる。今年、北京市と天津市は4月から最低賃金をそれぞれ
10.3%と10.1%上げると予告したところだ。』

『中国の内需市場進出も特に成果がない。イーマートさえとっくに撤退した
ほどだ。韓中FTAがあるというが関税引き下げの効果は最低5年が過ぎて
こそ出てくるもので、それも部分的な恩恵にとどまるだろうという見方だ。』

『さらに自動車・石油化学・2次電池などの主力製品はもとから落ち込んで
おり、中国のサービス・環境産業の開放も期待に沿えていない。あまり与えず
あまり受けない中級レベルの協定である事情に限界を有するしかない。』

『中国はもはや韓国の単純生産拠点でもドル箱でもない。中国製造業が韓国を
追い越す日は遠くないという評価だ。政府も企業もこうした構造的な変化に
対する備えが充分ではない。韓中FTAだけを眺めていては大きな問題になる。』


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自由貿易協定(FTA)を結んでいる、中国と韓国。
そういう意味では韓国にとって中国の成長率低下は、日本以上に影響が大きい
かもしれません。

一方、日本も今月12日から、ソウルで日中韓FTA交渉が始まる予定です。

韓国紙「中央日報」の社説を読む限り、交渉を妥結するメリットはあまり感じ
られないのですが...。


編集後記

以前からの弊誌読者の方は覚えていらっしゃるかもしれませんが、メルマガにて
クリックアンケートを復活させてみました。

毎回必ず掲載できるか、また、ずっと続けることができるかどうか、不安では
ありますが...。

メルマガ未登録の方は、この機会にご登録いただき、ぜひご参加ください!

ちなみに今回の質問は、「日中韓FTAについて、賛成か反対か」です。

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