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「安倍談話」について

仕事を再開された方も多いかと思います。

政権交代以降、株価が上昇を続け、円安も進んでおります。
「アベノミクス」。果たして景気浮揚の救世主となるのでしょうか。

安倍首相といえば最近、「村山談話」「河野談話」の見直しについて物議を醸しています。

そこで今回は、各々の主張がおそらく対極に位置するであろう産経紙と赤旗紙の主張と、物議発端の一因ともいえるニューヨーク・タイムズ紙の社説を紹介します。

なお、ニューヨーク・タイムズ紙社説の和訳については、こちらのサイトから引用させていただきました。
「Peace Philosophy Centre」『ニューヨークタイムズ社説が安倍歴史否定を批判』
ありがとうございました。


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☆5日付「産経新聞」
『「安倍談話」 国益損なう歴史認識正せ』の主張

『安倍晋三首相が歴史問題に関する日本政府の立場について、平成7年の「村山談話」に代わる未来志向の新たな「安倍談話」を発表する方針を打ち出した。

 「植民地支配と侵略」への「お詫(わ)びの気持ち」を強調した村山富市首相談話は政府の対中、対韓外交を萎縮させ、度重なる謝罪や非常識な賠償要求の要因ともなってきた。

 謝罪外交を断ち切り、外交を立て直す上で、談話の見直しは不可欠な作業といえる。国家観にもかかわる正しい歴史認識を明確に示そうとする安倍氏の積極的判断を評価したい。

 安倍氏は昨年12月31日付産経新聞の単独インタビューで、新たな談話を「21世紀にふさわしい未来志向」のものと位置付けた。国際社会に正確な史実を理解してもらうための努力は極めて重要だ。

 村山談話は日本が「過去の一時期」に国策を誤ったと断罪した。だが、その時期については特定せず、「終戦の日」に唐突に閣議決定するなど、内容も手順も問題の多い談話だった。

 菅義偉官房長官は昨年末、第2次安倍内閣でも談話を踏襲する考えを示した。だが、安倍氏は衆院選前から談話を見直す意向を語っており、村山談話を破棄しないものの、有識者の議論など手順を踏み、新内閣の歴史問題への姿勢を明確に示そうという狙いだ。

また、根拠なしに慰安婦強制連行を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話についても、第1次安倍内閣で閣議決定した政府答弁書の存在を強調している。

 答弁書は「政府が発見した資料には軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述は見当たらなかった」という内容だ。河野談話に事実上の疑義を呈した答弁書の意味について、さらに説明していくことが重要だ。

 3日付の米紙ニューヨーク・タイムズ社説は「歴史を否定する新たな試み」と安倍氏を酷評した。だが、明確な根拠もなしに「右翼民族主義者」などと決めつけることこそおかしいというべきだ。

 米国内の「安倍たたき」については「危険な右翼とする日本メディアの見立てを輸入したもの」と反論する知日派も少なくない。

 安倍氏は無理解や偏見にひるまずに、国益を損なう歴史認識や事実の誤りを正し、理解を求める外交努力を続けてもらいたい。』


☆5日付「赤旗」
『安倍首相歴史発言 世界に逆らいどこへ行くのか』の主張

『安倍晋三首相が政権発足直後の昨年末、産経新聞とのインタビューで、戦前の日本の「植民地支配と侵略」を反省した1995年の村山富市首相(当時)の「談話」や、いわゆる「従軍慰安婦」問題について謝罪した93年の河野洋平官房長官(同)の「談話」について見直しを示唆したことに、内外で批判の声が上がっています。アメリカの新聞ニューヨーク・タイムズ3日付は、「韓国との緊張をかきたて、協力をさらに困難にするような深刻な間違いで、在職期間を開始したいと思っている」と批判する社説を掲載しました。

 安倍氏は、戦前の日本の侵略戦争を美化し、靖国神社に合祀(ごうし)された「A級戦犯」も「国内法では戦犯ではない」などの発言を重ねてきた、根っからの「靖国派」です。いわゆる「従軍慰安婦」問題でも、「(家の中に踏み込んで無理やり連れ出すような)狭義の強制性はなかった」などといい逃れて、一貫して「謝罪」の見直しを主張してきました。

 「村山談話」は、戦後50年目にあたり村山首相が閣議決定を経て発表したもので、「国策を誤り、植民地支配と戦争によってアジア諸国民に多大の損害と苦痛を与えた」と「おわび」を表明したものです。日本が侵略戦争と植民地支配の責任を認め反省することは、戦後日本が国際社会の仲間入りをするための前提です。安倍氏が「村山談話」を見直し、「21世紀にふさわしい未来志向の安倍内閣としての談話を発出したい」と口にすること自体、国際社会を裏切るものだと取られるのは免れません。

 安倍氏が「村山談話」を破棄するといわず新しい「安倍談話」を出すといっているのは、「村山談話」が閣議で決定されているからというだけのごまかしであり、安倍氏の発言の危険性は明らかです。

 他方、安倍氏が「河野談話」について、「狭義の強制性はなかった」と批判し、変更の意向を隠していないのは、「河野談話」が閣議で決定されていないというだけが根拠です。しかし、「河野談話」は当時の政府(宮沢喜一政権)あげての「従軍慰安婦」問題の調査にもとづくもので、「慰安所の設置、管理及び慰安婦の移送については、旧日本軍が直接あるいは間接にこれに関与した」などと認めています。「狭義の強制」などというごまかしで、当時の政府や軍が行った強制の事実は否定できません。

 安倍氏自身、第1次政権を担当した2007年3月、「狭義の強制性」を否定する答弁書を閣議決定したため、内外からきびしい批判をあび、訪米などのさい、「河野談話」の継承を約束しなければなりませんでした。一部の「靖国派」有識者がその後も米紙に強制連行を否定する意見広告を載せたため、アメリカ、オランダ、カナダ、EU(欧州連合)などの議会で非難決議が採択され、日本が孤立する事態に追い込まれました。

 安倍氏の「産経」インタビューを批判したNYタイムズ社説は、「犯罪を否定し、謝罪を薄めようとするいかなる試みも、日本の野蛮な戦時支配を受けた、韓国、さらには中国とフィリピンを激怒させる」と指摘しています。

 歴史と世界に逆らう妄言がアジアだけでなく世界から批判されることを安倍氏は自覚すべきです。』


☆2日付「ニューヨーク・タイムズ」
『日本の歴史を否定する更なる試み』の社説

『アジアの安定のために、日韓関係ほど大事なものは他にあまりない。安倍晋三は今回の任期を、韓国との緊張を炎上させ協力をより難しくする深刻な過ちでスタートさせようとしているようだ。彼は、朝鮮半島や他の地域の女性たちを性奴隷として使ったことを含む、第二次世界大戦中の日本の加害に対する謝罪を書き直そうする動きを見せている。

1993年に日本は、何千、何万、または何十万の(訳者注:原文では thousands となっている。thousands は、「何千」単位から「何十万」単位までをカバーする)アジアとヨーロッパの女性たちを軍の慰安所で強姦し奴隷化したことをようやく認め、このような残虐行為に対して初めての完全な謝罪を行った(訳者注:「河野談話」のこと)。1995年には村山富市首相がもっと広範囲にわたる謝罪を行い、「植民地支配と侵略によって」、日本は「多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を」与えたと認めた。

右翼ナショナリストの安倍氏は、産経新聞のインタビューに応じ、特定はしなかったが「未来志向の談話」によって1995年の謝罪と入れ替えたいと言い、ロイター通信に月曜日に引用された。彼は前安倍政権(2006-2007年)は、戦時中日本軍の性奴隷となった女性たちが実際強制されていたという証拠は全く見つからなかったと言った。しかし先週の記者会見で、菅義偉官房長官は、安倍氏は1995年の謝罪は維持するが、1993年の談話は見直すかもしれないと述べていた。

自民党のリーダーである安倍氏がどのようにこれらの謝罪を修正するのかは明らかになっていないが、彼はこれまで、日本の戦時史を書き換えることを切望していることを全然秘密にはしてこなかった。こういった犯罪を否定し、謝罪を薄めるようなどのような試みも、日本の戦時中の残忍な支配に被害を受けた韓国、そして、中国やフィリピンをも激怒させることであろう。

安倍氏の恥ずべき衝動的行為は、北朝鮮の核兵器プログラム等の諸問題において、地域における大切な協力関係を脅かすものになりかねない。このような修正主義は、歴史を歪曲することよりも、長い経済不況からの回復に集中しなければいけないこの国にとって、恥ずかしいことである。』


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以上、長くなってしまいました。

この件については、いろいろな見方があるかと思います。
それぞれの主張を読んで、あなたはどう考えるでしょうか。


ところで、マスコミ・メディアを「信頼できない」「視聴する価値がない」と思う方も多くいらっしゃるかと思います。

確かに、報道されていることは真実の全てではないでしょう。

場合によっては、各メディアにとって都合のいい真実だけを編集していることもあるかもしれません。

しかし、そうした媒体を介さずして、広く世の中で起こっていることを知ることもできないと思います。

テレビ・新聞・ラジオ・ネットなどから隔絶された環境に身を置いていたならば、もしかしたらアメリカ大統領が誰なのかさえ、わからないかもしれません。

自分が信頼するソースからの情報のみ信用するという方もいるかもしれませんが、それが信頼に値するかどうかは、あくまでその人の主観によるものではないでしょうか。

「自分の見識は常に正しい」と思う方はそれでいいかもしれません。

しかし、少なくとも私は、それほどまでに自分の主観を盲信していません。
全知全能からほど遠い、完璧でない私が、「これが真実」と思っていることだけが真実であるはずがない。
客観的な視点は、どうしても持っていたい。

そのためにも世の中の事象を、価値観の異なる様々な角度から見る必要があるように思っています。

一つの事象でも、それに様々な角度から光を当てることによって、より実体に近い姿が浮かびあがってくることでしょう。

また、切り口の異なる複数の視点から見ることにより、物事がより立体的に感じられるようになるかもしれません。

個人・団体など、様々な立場から発信されている情報の中で、ある程度の規模の読者を有する新聞社説というものは、「それを基準点とした定点観測」ができる媒体とも言えるのではないでしょうか。

自分独自の情報源を持たない一般市民は良かれ悪しかれ、マスコミ・メディアの力を借りなければ世の中で起こっている出来事さえ知ることができません。


『国家の罠』という本の中で、著者の佐藤優さんはこう書いています。

『情報専門家の間では「秘密情報の98%は、実は公開情報の中に埋もれている」と言われるが、それをつかむ手がかりになるのは新聞を精読し、切り抜き、整理するところからはじまる。』
(「国家の罠」 佐藤優 新潮社 189p)

実際、諜報員などと呼ばれている人たちは普段、現地の新聞をじっくり熱心に読んでいると聞いたことがあります。

私はマスコミ・メディアからの情報を、うまく利用したいと思っています。


それでは、また。
あなたに素敵なことがいっぱいありますよう...。


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