新聞の社説から世の中を見る【世界の新聞「101紙」の視点】

世界の新聞の社説・TOP記事をあなたに

自民党によるテレビ局幹部事情聴取について

2015年4月19日(日)14時現在の各紙サイトより

国内主要紙一面トップ記事、及び社説・主張

*一部記事が有料なものや、無料会員登録が必要なものもあります。

【朝日新聞】
「朝刊一面トップ」
『医療被曝抑制へ基準 X線・CT検査対象 学会など』
「社説」
『中国と世界 新たな大局観育てたい』
『生活困窮支援 相談者に役立つものに』

【産経新聞】
「朝刊一面トップ」
『月面着陸へ3年後打ち上げ 有人火星探査の足掛かり』
「主張」
『酒の安売り規制 消費者の利益を損なうな』
『ナイジェリア テロ封じへ新政権支援を』

【東京新聞】
「朝刊一面トップ」
『首相、バンドン会議・米議会演説へ 70年談話 方向付け』
「社説」
『週のはじめに考える ヒラリー旋風は起きるか』

【日経新聞】
「朝刊一面トップ」
『ベア実施過半数に、賃上げ17年ぶり水準 本社1次集計』
「社説」
『G20は国際金融改革の前進へ結束せよ』
『首かしげる番組内容の聴取』

【毎日新聞】
「朝刊一面トップ」
『アジア投資銀、陰の主役 G20閉幕 米の守勢鮮明』
「社説」
『恒久法の歯止め 厳格な国会事前承認を』
『福祉資格の一本化 効用にも目を向けよう』

【読売新聞】
「朝刊一面トップ」
『高齢住宅の過剰介護防止 7月、厚労省が指導強化』
「社説」
『アジア投資銀 運営の透明性が確保できるか』
『専門職大学構想 産業界との協力推進がカギだ』


きょうの注目記事

自民党の情報通信戦略調査会がテレビ朝日とNHKの幹部を呼んで事情聴取を
した件について、それに強く異議を唱える東京新聞社説と、比較的批判がゆる
やかな産経新聞主張とを読み比べてみます。


【16日付「東京新聞」『権力と放送法 統治の具と成す不見識』

『権力者はなぜ、かくも安易に放送法を振りかざすのか。放送内容に誤りなき
を期すのは当然だが、放送局側を萎縮させ、表現の自由を損ねてはならない。』

『きっかけは三月二十七日夜、テレビ朝日系列で放送された「報道ステーション」
だった。』

『この日が最後の出演とされたコメンテーター、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が
「菅義偉官房長官をはじめ、官邸の皆さんからバッシング(非難)を受けて
きた」と述べると、菅氏は三十日の記者会見で「事実無根」と反論し、こう付け
加えた。「放送法という法律があるので、テレビ局がどう対応するか、しばらく
見守りたい」』

『自民党はあす、テレビ朝日などの経営幹部を呼び、番組内容について説明を
求めるという。』

『放送事業を規定する放送法は不偏不党、真実、自律を保障することで表現の
自由を確保し、健全な民主主義の発達に資することが目的だ。』

『放送番組は法律に基づく以外は誰からも干渉されないことが明記され、同時
に政治的な公平、真実を曲げないこと、意見が対立する問題は多くの角度から
論点を明らかにすることも求めている。』

『放送は、政権や特定勢力の政治宣伝に利用されるべきではない。大本営発表
を垂れ流して国民に真実を伝えず、戦意高揚の片棒を担いだ先の大戦の反省で
もある。』

『政治的に偏ったり、虚偽を放送しないよう、放送局側が自ら律することは
当然だが、何が政治的公平か、真実は何かを判断することは難しい。にもかか
わらず政治権力を持つ側が自らに批判的な放送内容を「偏っている」と攻撃
することは後を絶たない。』

『さかのぼれば一九六八年、TBSテレビ「ニュースコープ」のキャスター
だった田英夫氏(二〇〇九年死去)がベトナム戦争報道をめぐり「解任」
された件がある。』

『田氏は前年、北ベトナムの首都ハノイを西側陣営のテレビ局として初めて
取材し、戦時下の日常生活を伝えた。以前からTBSの報道に偏向との不満を
募らせていた自民党側は放送後、TBS社長ら幹部を呼び「なぜあんな放送を
させたのか」と批判する。』

『このとき社長は、ニュースのあるところに社員を派遣し、取材するのは当然、
と突っぱねたが、翌六八年に状況は大きく変わる。』

『成田空港反対運動を取材していた同社取材班が、反対同盟の女性らを取材
バスに乗せていたことが発覚し、政府・自民党側がTBSへの圧力を一気に
強めたのだ。』

『田氏は自著「特攻隊だった僕がいま若者に伝えたいこと」(リヨン社)で
当時の様子を振り返る。』

『<当時の福田赳夫幹事長が、オフレコの記者懇談で、なんと「このような
ことをするTBSは再免許を与えないこともあり得る」という発言をしたのです。
 これを聞いたTBSの社長は、翌日すぐに私を呼んで、「俺は言論の自由を
守ろうとみなさんと一緒に言ってきたのだけれども、これ以上がんばるとTBS
が危ない。残念だが、今日で辞めてくれ」と言われ、私はニュースキャスター
をクビになりました>』

『田氏解任の決定打は権力側が免許に言及したことだ。放送は電波法に基づく
免許事業。五年に一度の再免許を受けられなければ事業は成り立たない。同法
は放送法に違反した放送局に停波を命令できる旨も定める。権力が放送免許や
放送法を統治の具としてきたのが現実だ。』

『昨年の衆院選直前、安倍晋三首相はTBSテレビに出演した際、紹介された
街頭インタビューに首相主導の経済政策に批判的な発言が多かったとして
「おかしいじゃないですか」などと批判した。』

『自民党はその後、在京テレビ局に選挙報道の公平、中立を求める文書を送り、
報道ステーションには経済政策に関する報道内容が放送法抵触の恐れありと
指摘する文書を出した。そして菅氏の放送法発言、自民党による聴取である。』

『報道の正確、公平、中立の確保が建前でも、権力が免許や放送法に言及し、
放送内容に異を唱えれば放送局を萎縮させ、結果的に表現の自由を損ねかねない。
歴代政権は、自らの言動がもたらす弊害にあまりにも無自覚で不見識だ。』

『キャスターを解任された田氏は七一年、参院議員となる。二〇〇七年に政界
を引退する直前、本紙のインタビューに「メディアはもっと姿勢を正さなくちゃ
いけないね。報道に意気込みが感じられない。引きずられているんだよ」と
メディアの現状を嘆いていた。』

『政権による圧力に萎縮せず、それをはね返す気概もまた必要とされている。
放送のみならず、私たち新聞を含めて報道に携わる者全体に、大先輩から突き
付けられた重い課題である。』


【18日付「産経新聞」『自民党とテレビ 番組介入は抑制的であれ』

『政権与党が、個別の番組内容をめぐってテレビ局の幹部に直接説明を求める
ことについて、野党や一部のメディアには、「言論の自由を脅かす」などの
批判がある。』

『政府や政党が番組に介入するような行為に、抑制的であるべきなのは当然で
ある。無制限にこれが拡大されるような事態があってはならない。』

『ただしNHKは、「クローズアップ現代」の内容をめぐる問題で、同局の
調査委員会が「やらせ」の有無に言及しない中間報告を行ったままとなっている。』

『テレビ朝日では「報道ステーション」で元官僚の古賀茂明氏が自民党議員でも
ある菅義偉官房長官を名指しし、官邸から圧力があったなどと述べた。菅氏は
「事実無根」と否定している。』

『それぞれ事情を聴くには相応の理由がある。やらせや事実に反する報道が
あったなら、これは「言論の自由」以前の問題である。』

『危惧するのは、こうしたことを前例に、政治が正規の報道に介入する下地を
作ることだ。政府や政党には強く自制を求める。同時に、テレビ局の側も安易
に介入を招くような隙をみせぬよう、努めなければなるまい。』

『放送法第1条は「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、
放送による表現の自由を確保すること」と、うたっている。表現の自由は無条件
に与えられたものではない。放送法の基本に立ち返り、誤りがあれば、まず
自律的に対処すべきだ。』

『自民党が「報道ステーション」について「公平中立な」番組作りを要請した
問題や、今回の聴取に対し「政治的圧力が報道を萎縮させる」といった指摘も
ある。』

『果たしてそうか。』

『この程度の「圧力」で、本当に報道は萎縮するのか。聴取に不当な言動が
あれば、それを堂々と報じればいい。』

『僚紙夕刊フジのコラムでニュースキャスターの辛坊治郎氏は「萎縮させる」
との指摘に「『われわれテレビ屋をバカにするな!』と言いたい」と書いていた。』

『これがテレビマンの矜持(きょうじ)というものだろう。』


----------------------------------------------------------------------

この件については『自民党と放送 「介入」は許されない』として、「介入」
された当事者の(?)朝日新聞も社説を掲載していますが、「不適切な放送」
をした負い目もあるのか(?)、東京新聞ほど強い論調ではありませんでした。

また、日頃自民党寄りとも思える発言が多い気もする読売新聞は『テレビ幹部
聴取 与党として適切な振る舞いか』として社説を掲載していますが、『政権
与党がテレビ局幹部を呼び出すのは、行き過ぎではないのか』として、自民党
に『節度ある行動』を求めており、産経紙より若干厳しい論調となっています。

主要紙の中では批判の度合いに差がある両紙ですが、
『政権による圧力に萎縮せず、それをはね返す気概もまた必要とされている。』
(東京紙)
『この程度の「圧力」で、本当に報道は萎縮するのか。聴取に不当な言動が
あれば、それを堂々と報じればいい。』(産経紙)
とするあたりは、共通する認識のようです。


クリックアンケート

メルマガ誌上で、クリックアンケートを実施しています。
無料メルマガにご登録いただき、ぜひあなたのご意見を、5000人を超える読者の方々に
お伝えください!

今回のテーマは、【自民党によるテレビ局幹部事情聴取について】です。


編集後記

少し前の話題ですが、ボクシングの山中慎介選手がKOで8度目の防衛を果し
ました。

強いですね。

ボクシングといえば、近々「今世紀最大の一戦」と銘打たれる、マニー・
パッキャオ対フロイド・メイウェザー戦が、米ラスベガスで行われます。

ボクシングの世界最高峰レベルの試合というのは、専用の機器とそれなりの
お金がなければ観ることができないご時勢です。

海外での試合ですから、そう簡単に観に行くこともできません。

野球やサッカーとえらい違いです。

山中選手にしても、9回防衛している内山高志選手にしても、往年の名チャン
ピオンたちに勝るとも劣らない実績・強さがありながら、知名度は必ずしも
それに伴っていないように思います。

こうした観戦環境の違いが、ボクシングの人気や選手の知名度に影響している
ようにも思えてしまいます。

メルマガ登録解除
バックナンバーpowered by まぐまぐ!
まぐまぐ殿堂入り
メルマガ購読
世界の新聞「101紙」の視点

読者登録規約
バックナンバー
powered by まぐまぐ!
サイト内検索
カレンダー
最近のブログ記事
カテゴリー
月毎アーカイブ
ホームページ作成 大阪

このページのトップへ