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国旗国歌最高裁判決について

ご無沙汰しております。
桐鳳柳雨(とうほうりゅうう)です。

当号が、本年初の配信となります。
一昨年までほぼ日刊ペースで配信しておりました弊誌ですが、1年ほど前から諸般の事情により、不定期配信となってしまいました。

昨年後半には、配信間隔が半年も空いてしまうことも...。
相変わらず、メルマガ発行に時間を割く余裕のない毎日ではありますが、今年はもう少し配信したいと考えております。

せっかく登録していただきながら、ほとんど何のお役にも立てていない現状を大変心苦しく思っております。

そんな弊誌ではありますが、本年もどうかよろしくお願い致します。


さて、今回注目する記事は、
1月18日付「朝日新聞」『君が代判決 行き過ぎ処分に歯止め』
1月17日付「産経新聞」『国旗国歌判決 悪質違反は厳しく処分を』
1月21日付「赤旗」『「君が代」最高裁判決 断罪された 処分による強制』
以上、3社説(主張)です。

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「朝日」
『卒業式や入学式のシーズンを前に、最高裁から注目すべき判決が言い渡された。

 「式では日の丸に向かって立ち、君が代を歌うように」。そんな校長命令に従わなかった東京都の教職員への処分が、妥当かどうかが争われた裁判だ。

 結論はこうだった。

 規律や秩序を保つために、戒告処分はやむをえない。それをこえて減給や停職とするには、慎重な考慮が必要だ。式典を妨害したなどの事情がないのに、命令違反をくり返したというだけで、こうした重い処分を科すのは違法である。

 日の丸・君が代は戦前の軍国主義と深い関係があり、その評価は一人ひとりの歴史観や世界観に結びつく。

 最高裁は、昨年の判決で「起立や斉唱を命じても、憲法が保障する思想・良心の自由に反しないが、間接的な制約となる面がある」と述べ、学校側に抑制的な対応を求めた。今回の判決はその延長線上にある。

 私たちは、日の丸を掲げ、君が代を歌うことに反対しない。だが処分してまで強制するのは行きすぎだと唱えてきた。

 その意味で、戒告が認められたことへの疑問は残るが、最高裁が減給・停職という重大な不利益処分に歯止めをかけたことは、大きな意義がある。

 教育行政にかかわる人、なかでも橋下徹大阪市長が率いる大阪維新の会のメンバーは、判決をじっくり読んでほしい。

 維新の会は大阪府と大阪市で「命令に2度違反で停職」「研修を受けたうえで3度目の違反をしたら免職」という条例の制定を打ち出していた。

 違反に至った背景や個別の事情には目を向けず、機械的に処分を重くしていくもので、今回の判決の趣旨に照らして違法になるのは明らかだ。

 さすがに橋下市長と松井一郎知事は見直す考えを示した。だがそれは、停職処分とする前にも研修の機会を設けるという案で、問題の本質を理解した対応とはとても言えない。

 選挙で圧勝した2人には、民意の支持という自信があるのだろう。もちろん民意は大切だ。

 しかし、精神の自由に関する問題を、多数派の意向や思惑で押しきってはならない。それは歴史の教訓であり、近代民主主義を支える精神である。

 自分とは異なる意見の存在を受け止め、心の内にはむやみに踏み込まない。そうした寛容な土壌のうえに、しなやかで、実は力強い社会が生まれる。

 判決の根底に流れるこの考えをしっかりと受け止めたい。』


「産経」
『最高裁で学校行事での国旗国歌をめぐる3件の判決が下された。国歌斉唱の際、起立しなかった教師に対する東京都の処分を不当とした2審判決を破棄するなど、大筋で妥当な判断である。しかし一方で、停職や減給を行き過ぎとした一部判断には疑問が残る。

 3判決では、国旗国歌への指導や教師への職務命令について昨年5月以降の最高裁判決を踏襲し、改めて合憲と判断した。そのうえで懲戒処分のうち最も軽い「戒告」に問題はなく、昨年3月、教職員約170人への戒告処分の取り消しを命じた2審・東京高裁判決を破棄し、処分を有効とした。当然である。

 ところが戒告よりも重い「停職」や「減給」などについては裁量権の逸脱を一部認め、処分の取り消しを命じた。国旗の引き下ろしやゼッケンの着用、文書配布といった積極的な妨害や抗議行動などがない場合、停職や減給処分まで科すのは違法という判断だ。教育委員会に抑制的で慎重な対応を求めたといえる。

 だが、停職処分が取り消された教師は過去2年間で3回、不起立により処分を受けている。積極的な妨害はしていないといっても、校長による再三の指導や処分にも一向に耳を貸さず改めなかった。判決がこうした実態を踏まえなかった点は残念だ。

指導を無視し続けた結果、処分が重くなっていったのは当然である。そもそも卒業式など厳粛な式典の雰囲気を壊し、児童生徒に及ぼす悪影響を考えると、停職1カ月の処分はむしろ妥当で、「公務員は身分が守られ過ぎている」と感じる国民は多いだろう。

 大阪府では再三の職務命令にも従わない教職員について、処分を明確にする条例が検討されている。処分に高いハードルを課す今回の最高裁判決によって、条例化の作業自体が停滞する恐れもある。さらに各地の教育委員会が処分をためらい、見て見ぬふりをしている教育界の悪弊が一層強まることも危惧される。

 国旗や国歌を大切にするのは国民の素養だ。子供たちにも、きちんと教えなければならない。ところが学校では、長年にわたって国旗や国歌を政治闘争や裁判闘争の道具とする教師勢力がおり、さまざまな弊害がもたらされてきた。教育委員会には、さらなる毅然(きぜん)とした対応を求めたい。』


「赤旗」
『「君が代」斉唱の際、起立しなかった教員への重すぎる処分を違法とする判決が16日、最高裁判所でありました。

 判決は東京都教育委員会による処分についてのものですが、全国的な意義をもちます。「君が代」強制のルーツは戦前の教育です。その時代錯誤を見直し、強制をやめていくことは、日本の教育の大切な課題です。

 都教委は入学式・卒業式での国歌斉唱の方法などを詳細に決め、学校に強制してきました。そのための手段が違反者への重い処分です。不起立1回目で戒告処分、2回目で10%の減給1カ月、3回目で同6カ月、4回目は停職1カ月で教壇に立てなくなります。

 最高裁判決は、不起立は「個人の歴史観ないし世界観等に起因する」としました。この認識は、「君が代」「日の丸」が戦前、侵略戦争のシンボルとして用いられてきたことから、それらに拒否感をもつ国民がいることを政府が認めてきたこととも合致します。また不起立は「物理的に式次第の遂行を妨げるものではない」としました。

 判決は、毎年2回以上の式典のたびに処分となれば短期間で不利益が拡大することを指摘し、減給処分を違法としました。戒告処分は違法とされませんでしたが、処分をエスカレートさせ、自らの信念に誠実に生きようとする先生たちを追いつめるやり方に、歯止めをかけたものです。

 裁判官の一人は、体罰やセクハラ等に比べて処分が不自然に重い事実も指摘しました。都教委は態度を改めなければなりません。

 東京と並んで問題になるのは、橋下徹大阪市長(前府知事)と「大阪維新の会」がたくらみ、全国から反対の声があがっている大阪府の「教育基本条例案」です。その中身は、1回目で戒告または減給、2回目で停職、3回目で免職と違法とされた東京を上回ります。

 橋下市長は最高裁判決後、処分者に研修を行うことを理由に、東京とは「条件が異なる」と居直りました。しかし研修を受けても起立がいやな場合は「やめてもらう」と言うのですから、とても通用する話ではありません。条例案の撤回をつよく求めます。

 判決は同時に、「君が代」強制そのものは合憲とする従来の枠をでませんでした。それでも裁判官の1人は「強制は憲法19条(思想・良心の自由)に違反する可能性がある」という立場から反対意見を提出しました。別の裁判官は「不起立と処分の繰り返しは教育現場にふさわしくない」と「自由で闊達(かったつ)な教育を切に望む」と補足意見を提出しました。

 ほんらい、入学式や卒業式は子どものためのものです。ところが国は学習指導要領を盾に「君が代」「日の丸」強制を長期に続けてきました。心に残る式かどうかはそっちのけで、起立斉唱したかどうかに血道をあげる行政や管理職。どう考えてもゆがんでいます。

 教育の原点に返り、式のあり方は各学校で話し合って自由に決めるようにすべきです。仮に「国歌斉唱」を決めた場合も、個々人に強制できないことは憲法上当然のルールです。最高裁判決を機会に、強制自体をなくすたたかいを発展させることが重要です。』


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以上、他紙でも取り上げている話題ですが、その中から主要紙の中では左系・右系と対照的な主張を展開する朝日・産経両紙と、日本共産党の機関紙・赤旗に注目してみました。

結果的に、産経・赤旗が対極に位置し、その中間が朝日という構図になったでしょうか。

この問題。
弊誌でも以前から何度も取り上げており、読者の方々の意見がぶつかりあうなど、関心の高い話題だと思います。

個人的には、朝日紙が『結論はこうだった』とする最高裁判決の、
『規律や秩序を保つために、戒告処分はやむをえない。それをこえて減給や停職とするには、慎重な考慮が必要だ』
という一節が、妥当な落としどころではないかと考えます。


それでは、また。
あなたに素敵なことがいっぱいありますよう...。


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