「教科書検定」他国への配慮は必要?
2015年4月7日(火)15時現在の各紙サイトより
国内主要紙一面トップ記事、及び社説・主張
*一部記事が有料なものや、無料会員登録が必要なものもあります。【朝日新聞】
「朝刊一面トップ」
『教科書に政府見解加筆 慰安婦や東京裁判、意見6件 中学検定結果』
「社説」
『検定発表 教科書はだれのものか』
『難民受け入れ 拡大こそ国際貢献の道』
【産経新聞】
「朝刊一面トップ」
『前ソウル支局長 出国禁止8カ月 争点 コラムの公益性に』
「主張」
『前支局長出国禁止 重ねて即時帰国を求める』
『教科書検定 偏向是正を授業に生かせ』
【東京新聞】
「朝刊一面トップ」
『初の「政府見解尊重」検定 全教科書に竹島・尖閣 中学社会科 領土記述が倍増』
「社説」
『中学教科書検定 「なぜ」考えさせる授業に』
『マタハラ被害 法守る意識の徹底を』
【日経新聞】
「朝刊一面トップ」
『佐川、ローソンと新会社 コンビニ、宅配拠点に』
「社説」
『電源構成は将来を見据えて議論せよ』
『少数者の人権を守る大切さ』
【毎日新聞】
「朝刊一面トップ」
『中学教科書「領土」倍に 検定 政府見解反映』
「社説」
『教科書検定 創意工夫の道、より広く』
『菅・翁長会談 沖縄が示した強い意思』
【読売新聞】
「朝刊一面トップ」
『竹島・尖閣全教科書に 「固有の領土」明記 中学社会 文科省 検定結果公表』
「社説」
『菅・翁長会談 批判にも相手への配慮が要る』
『中学教科書検定 歴史と領土への理解深めたい』
きょうの注目記事
中学教科書検定について。
国内主要紙の中から、最も対極に位置すると思われる朝日紙と産経紙の社説・
主張を読み比べて見てみます。
【「朝日新聞」『検定発表 教科書はだれのものか』】
『教科書は、国の広報誌であってはならない。』
『来春から中学校で使う教科書の検定結果が発表された。』
『文部科学省は今回の検定から新しいルールを用いた。』
『教科書編集の指針を見直し、領土問題について日本政府の考え方を書くよう
求めた。』
『検定基準も、慰安婦や戦後補償など政府見解がある事柄はそれに基づいて
記すよう改めた。自民党の意向に沿ったものだ。』
『これまでの検定は、教科書会社が書いてきた記述を前提に判断する姿勢だった。
それを具体的に書かせる方向に転換した。』
『結果はどうだったか。』
『領土問題は、社会科の全社が扱った。「日本固有の領土」「竹島を韓国が
不法に占拠している」など編集の指針をなぞる社が多い。相手国の主張や根拠
まで扱った本はほとんどない。』
『これでは、なぜ争っているか生徒にはわからない。双方の言い分を知らなく
ては、中韓やロシアとの間で何が解決に必要かを考えるのは難しいだろう。』
『文科省は答えが一つでない問いについて、多様な人々と話し合いながら解決
の道を探る力を育てようとしている。その方向とも相いれない。』
『社会科の教科書は、国が自分の言い分を正解として教え込む道具ではない。』
『子どもが今の社会や過去の歴史、国内外の動きを理解するのを助けるために
ある。』
『政府の見解を知っておくことは悪いことではない。ただ、それは一つの素材
に過ぎない。』
『例えば戦後補償問題の場合。戦争で被害を受けた人々の証言、彼らの生きた
戦後、中韓や欧米、国連の動きも併せて紹介し子どもが考える。そんな教科書
が求められるのではないか。』
『どんな教科書をつくるかは、出版社が判断することだ。国の検定は控えめに
すべきである。』
『政府見解は絶対的なものではない。時の政権で揺れ動く。』
『検定でそれを書くよう強いれば、合格がかかるだけに教科書会社や執筆者は
萎縮し、政府の主張ばかり記すようになる。』
『教育内容が国に左右される危うさを、この社会は先の大戦で痛感したのでは
なかったか。』
『教科書を選ぶ作業が、これから各自治体で始まる。』
『今月から、自治体の長が設ける「総合教育会議」の制度が始まった。首長の
教育への関与を強める狙いだ。』
『だが、教科書採択はあくまで教育委員会の権限である。』
『我が街の子どもに、どの教科書がふさわしいか。教委は教育の視点でこそ
選んでほしい。』
【「産経新聞」『教科書検定 偏向是正を授業に生かせ』】
『日本の領土や歴史について他国の主張ばかり強調する偏向した内容の是正が
進んだことを評価したい。実際の授業に生かしてもらいたい。』
『新検定基準では、政府見解や確定判決を踏まえることや、見解が分かれる
事柄はバランスよく取り上げることを求めている。こうした当たり前のことが
守られず、どこの国の教科書か分からない記述が少なくなかった。』
『国益にかかわる日本の領土に関しても、これまで竹島や尖閣諸島について
「日本固有の領土」とはっきり書かない教科書があった。今回は申請段階から
日本の領土として歴史的経緯も含めた記述が大幅に増えたことを歓迎したい。』
『竹島については、地理、公民のほとんどの教科書で韓国により不法占拠されて
いることが明記された。これまでは「韓国との間に主張の相違がある」などと
書きながら不法占拠に言及しない教科書が多かった。教師も、領土の歴史を
含めて、生徒に分かりやすく教えてもらいたい。』
『戦後補償問題では、日本への補償要求が続いていることを取り上げた箇所に
対し、検定では戦後処理は解決済みであるとの日本の立場を踏まえるよう求め
られた。日本に賠償義務があるかのように誤解される記述を避けることは当然
である。』
『新検定基準に対し、国の規制が厳しくなったなどとする批判はあたらない。
子供たちが学ぶ教科書は執筆者や編集者らの一方的な考えを披露する場では
ない。ことさら日本をおとしめるような編集姿勢こそ見直すべきだ。』
『中学では現行で慰安婦について記述した教科書はなかったが、今回、慰安婦
募集の強制性を認めた河野洋平官房長官談話を一部要約して取り上げた教科書
がある。教育現場にも禍根を残す河野談話の見直しは欠かせない。』
『夏に向けて各地の教育委員会で教科書の採択が行われる。前回4年前の中学
教科書採択では、自由社と育鵬社の歴史、公民教科書に対し、「戦争賛美」
などと決めつけた反対運動が起きた。内容を誤解、曲解した批判である。』
『自分の国について深く学べる教科書を見極めることが重要だ。』
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前回、『他国の教科書に物申すべきか?』というタイトルで、韓国の「中央
日報」から『韓国の歴史教科書、コンテンツの不十分さが問題だ』という社説
を見てみました。
その中には、
『旧日本軍慰安婦に対する記述だけ見ても恥ずかしいことこの上ない。志学社
の教科書の場合「日帝は1930年代初めから若い女性たちを日本軍慰安婦と
して引っ張っていき性奴隷とした」というわずか1文に「慰安婦少女像」の
写真説明がすべてだ』
といったことも書かれていました。
それに対し、日本では朝日紙が、
『双方の言い分を知らなくては、中韓やロシアとの間で何が解決に必要かを
考えるのは難しいだろう』
『社会科の教科書は、国が自分の言い分を正解として教え込む道具ではない』
『政府の見解を知っておくことは悪いことではない。ただ、それは一つの素材
に過ぎない』
と、書いています。
産経・読売両紙以外の社説にも、似たような記述があります。
韓国の新聞で、「慰安婦や領土の問題については日本の意見も聞いてみないと」
ということを書くなど、考えられないことです。
また、当コーナーにて、
『日本の教科書の記述内容について、中国や韓国からは変更を要求してくることが
ありますが、逆に日本のほうからは、中韓両国の教科書の記述内容について
変更を要求したりすることはないように思われます』
とも書きました。
日本では、右寄りの新聞であっても社説で韓国の教科書記述に対して批判を
することはありませんが、韓国では三大紙がこぞって社説で日本の教科書検定
を批判しています。
このあたり、ことの是非はともかくとして、両国の違いが興味深いです。
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今回のテーマは、【「教科書検定」朝日・産経どちらに共感しますか?】です。
編集後記
クリックアンケートのコメントにて、「アンケートの制限時間が短いのでは?」
との、ご指摘をいただきました。
そこで従来、基本的に翌日の14時を締切時間としていたものを1日延長して
翌々日の14時締切とすると共に、集計結果を前々回のものまで掲載するように
してみます。
ご意見、ありがとうございました。

