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日本はAIIBに参加すべきか

2015年3月25日(水)14時現在の各紙サイトより

国内主要紙一面トップ記事、及び社説・主張

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【朝日新聞】
「朝刊一面トップ」
『150人乗り独旅客機が墜落 全員犠牲の恐れ 仏南東部』
「社説」
『政治資金規正 やり過ごすつもりか』
『免震ゴム偽装 安全軽視の姿勢改めよ』

【産経新聞】
「朝刊一面トップ」
『独旅客機墜落 150人絶望 搭乗名簿2邦人の名か 仏南東部』
「主張」
『日インドネシア 「自由な海」へ連携強めよ』
『中国人船長判決 領海を密漁天国にするな』

【東京新聞】
「朝刊一面トップ」
『新座市が「慰安婦」展拒否 施設使用「啓発的事業」理由 市民団体反発』
「社説」
『企業の顕彰 正しい経営を広めよう』
『コンビニ統合 やさしさでも競争を』

【日経新聞】
「朝刊一面トップ」
『関電、廃炉に海外企業 アレバ・WH 応札へ』
「社説」
『日本は国際会計基準の改善にも尽力を』
『これでいいのか理研の幕引き』

【毎日新聞】
「朝刊一面トップ」
『150人乗り独旅客機墜落 日本人2人搭乗か 仏南部』
「社説」
『理研トップ退任 積み残しの課題は多い』
『地価の回復傾向 デフレ克服の追い風に』

【読売新聞】
「朝刊一面トップ」
『独旅客機、仏で墜落 アルプス山中 乗客乗員150人 日本人2人搭乗情報 エアバスA320』
「社説」
『辺野古移設作業 冷静さを欠く知事の停止指示』
『自公幹事長訪中 議員交流で信頼醸成を図ろう』


きょうの注目記事

「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」について、最後に国内主要紙の社説・
主張から見てみます。
産経・日経・毎日各紙に掲載されていました。


【18日付「産経新聞」『中国主導の投資銀 恣意的運営を防げるのか』

『中国主導で年内の設立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)に先進
7カ国(G7)から初めて英国が参加し、他の欧州諸国も追随する可能性が
出ている。』

『設立には、米欧や日本が構築してきた国際金融秩序を崩す狙いが指摘される。
英国の参加はG7の結束を揺るがしかねない。一方、経済覇権の動きを強める
中国には追い風となろう。』

『問題は、中国による恣意(しい)的な組織運営への懸念が依然、払拭されて
いないことだ。中国が経済・外交的な影響力を高めようと、投資銀を使って
甘い審査で資金をばらまくなら、途上国の健全で持続的な発展は望めない。』

『出資国として透明性を確保する責任をどこまで果たせるかが、英国には問われ
よう。』

『公正な統治の確立や融資方法に不安が残るとの判断から、日本が現段階で
参加を見送る方針をとっているのは妥当だ。共に距離を置いてきた米国とともに、
英国と連携し、中国への働きかけを強めてほしい。』

『AIIBは途上国のインフラ整備に融資するのが目的だ。中国は最大出資国
として初代総裁を出すとともに、組織運営も掌握するとみられている。』

『中国は、世界銀行や国際通貨基金、アジア開発銀行などの場で、経済力に
見合った影響力を行使できないのが不満だった。アジアの旺盛なインフラ需要
に対応するには、既存の枠組みだけでは不十分であり、AIIBが役割を果たす
余地はある。』

『だが、それには国際機関の名にふさわしい運営が欠かせない。環境や腐敗・
汚職に目配りせず、お手盛り融資や返済能力を度外視した過剰融資を行うこと
は許されない。』

『中国には景気減速で生産設備が過剰になった問題の解決をインフラ輸出に
求め、人民元の国際化を図ろうとする狙いもある。』

『英国の参加は、AIIBが市場で資金調達する際の信用力を高めるだろう。
英国にとっては、巨大市場を抱える中国との関係強化が魅力だ。英国や他の
欧州諸国は、日米と比べれば安全保障面で中国と向き合っておらず、参加の
ハードルは高くないのだろう。』

『日米と中国が新たな経済秩序構築でせめぎ合う構図は、環太平洋戦略的経済
連携協定(TPP)などの通商交渉でも同じだ。肝心なのは日米の緊密な結束
である。』


【20日付「日経新聞」『中国が主導するインフラ銀に積極関与を』

『中国主導で創設するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、欧州の主要国
が相次いで参加意思を表明した。日本はどう向き合うべきか。欧州の先進国が
加わり、広がりのある国際金融機関がアジアに誕生する以上、目をそむけ続ける
わけにはいかない。』

『AIIBの現時点の構想は、意思決定の仕組みや審査基準などに不透明な点
が多い。資本金の過半を拠出する中国が強大な発言力を持ち、巨大なインフラ
需要に応える資金の流れに支配的な影響を与える可能性もある。』

『さらに安全保障上の警戒感もあり、日米両国は参加に否定的だ。』

『だが対中貿易・投資の実利を追う英国、ドイツ、フランス、イタリアの加入
で主要7カ国(G7)のうち4カ国が構想支持に回り、先進国の日米欧と中国
が対峙するという構図は完全に崩れた。』

『流れが変わった以上、現実的な目線で中国の構想と向き合うべきではないか。
AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から
建設的に注文を出していく道があるはずだ。』

『AIIBを「中国の銀行」ではなく中立性の高い「多国籍機関」に導いて
いく努力を、怠るべきではない。創設メンバー国となる欧州各国やニュージー
ランドは、内部から透明性の確保を働きかけていく構えだ。中国側も新銀行が
国際的な信認を得るために、耳を貸さないわけにはいかない。』

『欧州各国が中国陣営に取り込まれ、G7に亀裂が入ったとの見方はある。
だが、AIIB設立協定の締結に向けた協議や設立後の運営への発言権を確保し、
内外からAIIBへの関与が可能になったと考えることもできるはずだ。』

『好むと好まざるとに関わらず、AIIBは年内に発足する。中国の独走を
防ぐためには、まず公平で透明な統治の機構を設計することこそが肝要である。
そのための条件が満たされるならば、日本が資金を拠出して構想に参加する
選択肢も排除すべきではない。』

『AIIBが中国の意のままに動く銀行となり、環境に配慮しないインフラ
開発や持続不能な事業への融資が横行するのではないかとの疑念も広がる。
非参加国の企業が入札に加われないなど、不利な条件を恐れる日本企業も多い。』

『AIIBを健全に育てるためにも、日米中心のアジア開発銀行(ADB)は
資金力を増やし、競争と協調の両面で関与を深めるべきだ。』


【24日付「毎日新聞」『アジア投資銀行 積極関与を考える時だ』

『中国が主導し年内の設立を目指しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)
に、加盟を表明する国が相次いでいる。創設メンバーとして組織の骨格づくり
に参加するには、月末までの意思表明が必要なのだが、日本はまだである。』

『設立に否定的な米国への配慮や、冷え込んだ日中関係の影響もあるだろう。
ただ、中国主導とはいえ、アジアの成長基盤を担う国際機関の設立だ。アジア
の主要国である日本を含まない始動は、新銀行にとっても日本にとっても良い
ことではない。積極関与を真剣に検討すべきだ。』

『AIIBは中国の習近平国家主席が2013年に設立を呼びかけた。当初の
賛同はアジアの新興国が中心で、圧倒的な中国支配の印象が強かったが、今月
半ば、様相が急変した。主要7カ国でAIIBへの対応を協議していたとされる中、
その一員で米国と強い同盟関係にある英国が電撃的に参加を決めたのだ。』

『欧州の主要国が次々と後に続き、アジア太平洋地域でも豪州が、不参加方針
を転換した。加盟国の裾野が広がり、多様性を持った国際機関になる可能性が
見えてきた以上、傍観を続けるのは得策ではない。』

『意思決定や融資審査の透明性などに疑問がある、というのが日本政府の主張
のようだ。確かに、日米が主導してきたアジア開発銀行(ADB)と異なり、
加盟国の代表が本部に常駐しない恐れや、その結果、審査が甘くなり環境破壊
や汚職を伴う投資が行われる心配はある。』

『だが、だからこそ、日本は米韓にも参加を呼びかけ、ADBと補完・協調
関係を持つ新機関を目指すべきではないか。』

『組織運営上の心配がなくなれば「協議ということになる可能性はある」
(麻生太郎財務相)というが、条件が整うのを外で待つより、整うよう内部
から働きかけた方がよい。域内の主要国がチェック役を果たさないでどうする
のだろう。』

『英国が対米関係悪化の危険を冒してまでAIIB参加に踏み切った背景には、
成長の潜在性が著しい人民元取引でロンドンを中核市場に育てようとの戦略が
あるようだ。だが、人民元の国際市場など、本来なら長らくアジア随一の経済
大国だった日本こそ目指すべきものだ。』

『そもそも中国が新たな国際機関樹立に動いたのは、ADBや国際通貨基金
(IMF)など既存の国際機関が、中国による経済規模に見合った貢献を認め
ようとしなかった結果である。既存機関の組織改革で、日本の努力が十分だった
とは言い難い。』

『誤算や対応の遅れは否めないが、軌道修正はできる。中国が何をやりかね
ないかより、日本がアジアでどうしたいか、が問われている。』


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産経紙は参加に反対、日経紙と毎日紙は参加すべしという立場です。

『積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはず』
(日経紙)
『条件が整うのを外で待つより、整うよう内部から働きかけた方がよい。域内
の主要国がチェック役を果たさないでどうするのだろう』
(毎日紙)
と、共に「参加してAIIB内部から関与せよ」との意見です。

毎日紙はそれに加え、
『既存機関の組織改革で、日本の努力が十分だったとは言い難い』
と、日本にも問題ありとしているようです。

また、産経紙の『肝心なのは日米の緊密な結束である』との一文。
産経紙のあらゆる主張の基盤が、ここに表れているように思います。


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今回のテーマは、【「きょうの注目記事」で最も共感したのは?】です。


編集後記

家の近所の桜が、ちらほら咲き始めました。

sakura.jpg

いよいよ、桜の季節ですね。


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